2023年3月31日、28年間勤めた千葉大学を65歳で定年退職しました。25歳(博士課程入学)以降を研究者人生とすると、40年の研究者としてのキャリアを終えたことになります。この間、“科学”の“おもしろさ”を十分堪能することができたと思いますが、好奇心というよりは、隙間探索という点におもしろさを感じていました。他人の考えないことをやってやろう、見えていないものを見てやろう、そんな思いが駆動力になって自分の科学(学術)を支えていたのだなと思います。環境(人、自然、社会の関係性)が研究対象であり、総合的、包括的視点から環境を構成する(見えていなかった)諸要素とそれらの関係性の発見をめざす習慣をキャリアのなかで身につけることができました。キャリア終盤では問題解決型科学について考えるようになり、感性の重要性に気がつきました。感性がなければ問題のリアリティーに接近することはできません。高みで発信し、満足してしまうことは問題に対しては甚だ迂遠な解決手段でしかありません。リアルな問題を眼前にすると日本の学術のあり方についても考えざるをえなくなります。今、定年という節目を迎え、現場に身をおいて実践したいという思いが強くなりました。学術の価値を数値指標ではなく、問題の解決あるいは諒解の達成に置くことができれば良いと思います。写真は2012年5月6日に撮影した飯舘村長泥の峠の桜。長泥は2023年5月1日に避難指示が解除されました。それは12年にわたった問題の解決ではなく、諒解にすぎません。この諒解に科学は少しは役に立ったのでしょうが、やむを得ない諒解であり、その背景には狭義の科学では気づきえない感性の領域があるはずです。これまでの科学を超えた新しい科学が必要な時代に入ったと思います。そんなオルタナティブ・サイエンスをめざして与生を過ごしたいと思います。与生とは科学技術がもたらした追加の人生です。この貴重な与生を大切にしたいと思います。山村で暮らしたいものだ。

老人の主張-最近のできごと(2023年4月以降)
まだ研究者人生の余韻が残るこの頃ですが、出来事があったら報告したいと思います。

[予告] 「人・自然・社会の関係を整える-職業科学と市民化学-」 NPO法人環境カウンセラー千葉県協議会 2024年5月25日

「千葉県における災害-地理学の観点から-」令和5年度千葉県公衆衛生学会 2024年1月31日

「印旛沼を育む台地の成り立ちの恵み(1)下総台地の12万年の変遷」印旛沼環境基金 2023年12月2日

「もと理系の視点から見る地球温暖化問題とひとの対応」、千葉大学公正型社会研究主催 第2回国際温暖化対策研究会 2023年7月3日

「初級技術者のための地下水講座-地下水概説-1.地下水の理論と実際」、一般社団法人地下水技術協会 一般社団法人日本さく井協会基礎知識講習会 2023年6月30日

「地域で安心して暮らすための災害の知識」、日本老年看護学会第28回学術集会(オンデマンド講演)、2023年6月16-18日


隠者の随想録
隠者文学の代表とされる“方丈記”で有名な鴨長明ですが、なんだか自分に似ているような気がします。私も人生終盤は隠者として暮らしたいと思っていますが、隠者はけっして隠遁者ではなく、この世の有り様を外側から観察し、あれこれ評論するひとではないか。あれこれ言いつつ実践することはないのですが、自分は少しは現場で実践をやってみたいと思うのです。だから、鴨長明とはちょっと違う“ニュー隠者”になると、最終講義ではほざいてしまいました。実行せねばなりません。

隠者のつぶやき
「口は災いの門」は近藤のガス抜きの場でしたが、暮らしの必需品だったようで復活させることにしました。定年後はあまりガスを抜く必要もなくなりましたが、弱音を吐いたり、備忘録をつけたり、老人固有の思い込みをつぶやく場としてストレス解消に役立てたいと思います。

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