アイスリタン メメティエリさん 日中科学技術交流協会中国人留学生研究奨励賞受賞

2018年度中国人留学生研究奨励賞の授賞式・研究発表会が東京大学山上会館で開催されました。近藤研究室からアイスリタン メメティアリさんが受賞し、ニュースレターに寄稿して頂いた文章を再掲します。


 私は、修士課程2年だった2012年に、新疆師範大学と千葉大学の交換留学生のプログラムに参加し、1年学費免除で初めて日本に来ました。私が海外に来たのはこれが初めてでした。この後1年間は一度帰国し、2014年10月から日本で博士課程に入り、今までたくさんのことを学び、体験をしました。この日本に来てからの期間で、私が学んだことを2つに分けてまとめました。1つは日本で生活する上で、私の人生において成長できたこと、2つ目は、勉学と研究において達成できたことについて記したいと思います。

(1)私の人生において成長できたことと日本での生活について
 どの家族にとっても、子供は特別な存在です。私は家族の中で、唯一の娘であり、来日するまで私の家族は私のことを本当に大事に育ててくれました。新疆ウィグル自治区の他の学生と同じように、食事や衣服、その費用などすべてをいつも私に用意してくれました。大学では、寮に入り、4人一部屋の生活でした。大学時代は大学のキャンパス内が主な生活の場所であり、それまでの私の生活は主に家と学校の中だけでした。初めて来日したとき、日本では、大学生はキャンパスの外で、自分で部屋を借り、生活費はすべて自分自身で工面する独立した生活スタイルであることを知りました。私が日本で生活するようになってからは、私自身もそのような生活をするようになりました。日本では、生活のための費用が高く、講義や大学の勉強以外の時間、日本語の勉強や日本の社会を知るため、また日本における経験を積むためにアルバイトをしました。ウィグル自治区では、大学生が学費のためなどの理由でアルバイトをすることは少ないため、このアルバイトは私にとって初めての経験でした。そこで、働くことの大変さを改めて知りました。また、そこで日本語をさらに学ぶことができました。さらに、たくさんの善い人たちに会い、多くの友人を作ることができました。また、日本の社会の風習や日本人の人生に対する向き合い方を学び、多くの体験をしました。このような日本での生活をしていく中で、両親に頼らず、自分自身で生活していこうと考えるようになり、自分自身に対して自信をつけることができました。

(2) 勉学と研究において達成できたこと
 日本の教育と母国の教育には非常に大きな違いがあることがわかりました。例えば、日本の大学では、1週間に1回セミナーがありますが、ウィグルの大学では、とても少ないです。私は修士課程でしたが、私が学生の頃は、学生の研究室はなく、図書館や寮で勉強します。研究上の問題がある場合は、指導教員の事務所に行き、相談、議論をしていました。日本では、教授と学生の議論の機会はとても多く、毎週のセミナーに参加することで、発表の練習や研究の進め方、発表スライドにおいて、ページとページの連続性を持った作成方法、また、研究を一本のストーリーとしてどうまとめるか、他の学生に制限時間内で自分の研究内容をいかに伝えるかといった基礎的な部分から、科学を使って自分がどう世界に貢献するかといった、研究者にとって生涯の課題となる問いについて考える機会をも得ることができました。また、同じ研究室の他の学生の発表を聴くことで、その研究内容や手法について学ぶきっかけになりました。
 これまで得た知識や行った研究を基に、口頭発表、ポスター発表を含めて9回学会発表を行いました。そのうち、6回は国際学会で、3回は口頭発表でした。その中で、聴衆の方達は私の研究を認めてくれ、とても良いコメントを頂きました。  
 日本に来る前、研究者としての私の経験は少なく、来日してから現在まで、研究とは何か、世界レベルの研究から見たときに、自分の研究がどの位置付けになるか、世界の標準レベルの論文の書き方、また論文を書くということは、自分の業績だけではなく、世界の人に自分の研究を広めるという行為の一つであること、さらに博士号を取るためにどのような知識や経験が必要であるかといったことを学びました。このような経験から、国際誌にこれまでの私の研究成果を発表しました。 私はこれまで、新疆ウィグルの元指導教官を含め、日本の大学の教授の人柄や知識の深さ、研究に対する姿勢に感銘を受けました。修了後は、新疆ウィグルに帰国し、大学の教員になることが私の目標です。そこで、このような方達のように、自分の学んだ知識や経験を基に、新疆ウィグルに貢献したいと思います。