千葉大学
FUTURE EARTH KICKOFF WORKSHOP

 千葉大学がフューチャー・アースに参加することになりました。近藤研究室がキックオフワークショップで展示したポスター、パネルディスカッション資料を紹介します。

ちらし(プログラム、会場の詳細はこちらをご覧ください)


【ワークショップ前の雑感】 フューチャー・アースの目的、超学際(Transdisciplinarity)のあり方については研究者コミュニティーの中でコンセンサスが形成されているとはまだまだ言えないような気がします。私自身が考える縁(よすが)は、①環境問題は(それが地球環境問題でも)地域における人と自然の関係性に関わる問題であること、②どんな世界観、自然観、社会観を持つかが行動に関わってくること、③世界はたくさんの相互作用する地域で構成されていること、④目的は研究者だけでなく、当事者としてのステークホルダーもしあわせになること、こういったことです(詳しくは後ほど)。一方で、パトロンが国である大学の研究者は、その評価基準に則り、予算をとり、研究を推進し、論文を書かなければならない。しかし、これをあからさまに言っては、市民ステークホルダーの信頼は得られない。じゃあ、どうすればいいの、というのが大方の研究者の感覚だろう。やはり、目指さなければならないのは、研究者のあり方のTRANSFORMATIONなのではないか。研究者自身の問題であると同時に、社会の問題でもある。


【ワークショップ後の感想】 フューチャー・チバ、これはワークショップ最後の会場からのコメントで頂いたワード。千葉でちまちまやって、どうやってグローバルにつなげるのか。このコメントをまともに受け止めてしまった方も多いと思うが、彼は分かっていながらあえて発してくれた貴重なコメントです。グローバルとローカルの関係に関する基本的な考え方が十分共有されていないということは私自身が感じていることでもあります。このコメントを受け止めて、考え方をきちんと返していればワークショップは大成功だったと思いますが、時間の制約で打ち切られてしまったことが残念です。改めて思うことは、人の考え方は関係性を持つ範囲で決まってくる。これを私は“世界”と読んでいますが、人の“世界”を拡張し、交りを大きくすることがフューチャー・アースの目標のひとつではないか。それで初めて協働が可能となる。グローバルは物理で結ばれているわけではない。グローバルはフレームであり、様々な地域が相互作用しながら存在している。グローバル理解の要のひとつは類似性あるいは共通性。千葉と世界に共通する課題は、都市と農村の関係、閉鎖性水域の水環境、などたくさんある。千葉の成果をグローバルのフレームの中に位置づけることにより、千葉が世界の中で価値を持つことになる。“世界”に関する議論がもっと必要。それを邪魔してしまうのが地位とか権威なのかも知れない。フューチャー・チバ、私はこれで行きたい!


近藤研究室展示ポスター

超学際研究の実現における課題

ポスターのテキストはここをご覧ください。フューチャーアースの 課題は地球環境変化だと思いますが、それに対応する“地球環境研究”と“地球環境問題”はきちんと峻別しなければいけないと思っています。地球環境研究は科学者の仕事ですが、地球環境問題は暮らしが脅かされる地域の“人”の問題です。このことを理解するとともに、“人”を中心に考え、人にとっての、①今を良くするか、②未来を良くするか、どちらを考えるべきか、また、この二つは同じ事なのか、異なる事なのか、しっかり考え、行動することが科学者にとって必要なことだと思います。

原子力災害における“科学者”とステークホルダーの協働のあり方

原子力災害被災地の復興における科学者の役割
○現状が決して元には戻らない現実における問題の解決とは、合意形成、あるいは諒解の形成、である。
○そのためには、共感基準・理念(原則)基準・合理性基準の三つの観点を共有することが必要である。
○科学者の役割は、問題の解決を共有したフレームの中で役割を果たすことである。協働のためには、価値・哲学・倫理領域に踏み込まなければならない。
○地域を包括的に理解し、地域の誇りを取り戻す中で、復興への道が開けてくる。グローバルたくさんの小さな“世界”(ローカル)から成り立っている。それぞれの“世界”を尊重することが復興-“福幸”につながる。
○研究をやっていれば、自分ではない誰かが、その成果を社会に役立ててくれるわけではない。

印旛沼流域水循環健全化を取り巻くトランスディシプリナリティー

印旛沼流域、ここではすでに産官民学のたくさんのステークホルダ-、複数の大学が連携するトランスディシプリナリティーができあがっています。このフレームの中で、千葉大学がイニシアティブをとるなんてとんでもないこと。役割を果たす。これがトランスディシプリナリティー。

オンデマンド・リモートセンシングによる“農業支援”

ステークホルダーとリモートセンシングの接続。現場の農家や作物の研究者との交流を通じて、自分の“世界”が広がっていくことを感じます。この研究の目的は何か。それは農を通じて安心な暮らしを創り出すことなのではないか。

UAVによる空間線量率マッピングと原子力災害被災地域への適用

私はスターウォーズが好きです。沼の惑星や沙漠の惑星の洞窟で隠遁生活をするヨーダやオビワン。プリミティブな生活をしながら、科学の成果を使いこなしている。文明の災禍である原子力災害において、人と自然の良好な関係性を取り戻すために、少しでも科学技術が役に立てば、こんなにうれしいことはないのだが

パネルディスカッション用資料

時間が少ないため、短く纏めていますが、8月に行った勉強会で使った資料をここに置いておきます。
個別性は普遍性の上にあり、普遍性をベースに、個別性を理解しなければ環境問題は理解できない。環境学は人と自然の関係学だから。世界は相互作用するたくさんのローカルで成り立っており、グローバルはローカルを包括するフレームである。物理がグローバルを支配しているわけではない。ローカルが良くなれば、ローカルの集合体であるグローバルは良くなる。そのための知識、経験を共有する仕組みはすでにある。今必要なことは、研究者の考え方のTRANSFORMATIONではないか。

連絡先:kondoh(at)faculty.chiba-u.jp