第2回 千葉大学サイエンスカフェ WITH ウェザーニュース

2月に第1回を開催したWNIとのサイエンスカフェの2回目が2007年7月5日に開催されましたが、そこで話題を提供しました。今回のテーマは「地球温暖化」。ちょうどIPCCの第四次報告書が公開されたばかりで、皆さんの関心も高いテーマでした。高村先生によるIPCC第一作業部会の内容に対応する温暖化の実態に関する講演の後に、近藤が第二作業部会に対応する内容で「温暖化から何を守るか」と題して話をさせていただきました。

地球温暖化から何を守るか

今回のIPCCの報告では、地球温暖化は確実に進行しており、その原因は人間活動の可能性が高い、ということについてコンセンサスが得られ(第一作業部会)、世界から集められた証拠により、温暖化の影響も顕在化していることが明らかにされました(第二作業部会)。

地球温暖化を防ぐために、我々が二酸化炭素の放出を減らすことは極めて正しい行いだと思います。100年後の地球環境を良くすることになると思います。しかし、温暖化の影響とされているものの実態をステレオタイプにとらわれずに眺めてみるとどうなるでしょうか。民主党じゃありませんが、“生活が一番”。問題の実態認識を誤ると現在起きている問題の解決を先送りすることになるかも知れません。

最初に、“問題”は地域における“ひと”と“自然”の分断によって生ずることを述べました。ひとが自然のことを意識しなくなった、知らなくなった、ということ。日本の近代化の歴史の中でも、“ひと”が“自然”を意識しなくなると、汚染等の問題や、避けられた災害が発生するようになりました。“ひと”と“自然”の分断の例として、今回の講演では地球温暖化とも関係があると言われている2005年のハリケーンカトリーナ災害を取り上げました。

ハリケーンカトリーナは大型のハリケーンでしたが、未曾有というほどの規模ではなく、予想されたコースを予想された勢力で移動し、そして通過していくはずでした。しかし、堤防が切れてしまったことにより、その後の処置に時間がかかってしまったことが未曾有だったわけです。すぐ後にハリケーンリタが発生したことも混乱に拍車をかけました。この時切れた堤防は最大規模のハリケーン(カテゴリー5)には対応していませんでした。

いくつかの報告書には、最大の問題はニューオーリンズが三角州の上に発達した都市であり、人々がその土地条件を知らなかったことにあると書かれています。都市域が後背湿地に拡大し、広範なゼロメートル地帯となっていた上に、デルタの海岸では海岸侵食も起こっていました。これはミシシッピ川の運ぶ土砂が治水工事によって減ってしまったからだと言われています。

沖積低地に都市を造るには地盤の性質を知り、十分なコストをかける必要があります。日本では東京下町低地がニューオーリンズと同じ三角州(および埋立地)上にある都市ですが、今のところコストをかけて守られている土地であるといえます。そのコストは税金であることも意識しなければなりません。

そのほか、温暖化の影響とされているものの実態についていくつかコンテンツを用意しましたが、また次の機会にお話ししたいと思います。


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